• Facebook
  • Twitter

財務デューデリジェンスについて

財務デューデリジェンスとは、その名前の通り財務面について実施するデューデリジェンスです。M&Aの場面などでよく実施される調査で、事前に提供を受けた情報や資料をもとに、その実態について詳細な確認手続きを実施します。

財務デューデリジェンスの必要性

財務リスクの抽出

企業の財務状況は決算書や試算表で確認することができますが、いわゆる「簿外債務」と呼ばれるような帳簿上に表れない負債を抱えていることがあります。こういった財務面のリスクを抽出するためにも、財務デューデリジェンスは実施されます。

買収後の事業計画策定

M&Aで企業や事業を買収した後には当然買い手側で運営することになりますが、運転資金など財務面の情報を正確に把握しておかなければ資金ショートリスクが発生してしまいます。そういった情報把握のためにも実施する必要があります。

買収価格(バリュエーション)の算出

買収価格を評価するにあたって、買収する企業の資産や負債を正しく評価する必要があります。帳簿上の金額は時価をタイムリーに把握しているとは限りませんので、一定時点における評価を入れて、企業価値算定などに用いる適切な財務状況を把握する必要があります。

買収可否の決定

前述したような調査・手続きを踏むことで、企業の財務状況の実態を把握することが可能です。その実態を把握したうえでリスク評価なども行い、実際に買収を実施するかどうかの意思決定を行うことになるでしょう。

財務デューデリジェンスの流れ

専門家の選定・依頼

まずは財務デューデリジェンスの実施を依頼する専門家を選定します。一般的には公認会計士や税理士が実施することが多いため、数字に強い専門家に依頼するのがよいでしょう。財務系コンサルティング会社にも頼むことが可能です。

調査範囲・スケジュールの決定

財務デューデリジェンスと一言で言ってもその調査内容は多岐にわたります。そのため買収する企業の規模や業種、資料提供状況、買収にかけるコストなどを総合的に勘案し、調査範囲とスケジュールを協議・決定します。

買収先企業と秘密保持契約

M&Aにおける財務デューデリジェンスは、専門家と買い手企業の相対契約になることが一般的です。当然ながら最終譲渡契約を締結するまではブレイクリスクがゼロではありませんから、買収する企業サイドと専門家の間でも秘密保持契約を締結する必要があります。

資料請求・調査

財務デューデリジェンスの実施に際しては、先方からの提供資料をもとに調査が進められます。まずはリスト形式で資料の要請を実施し、受領したものから調査・検討を行います。場合によっては追加要請を行うこともあります。

ヒアリング

調査は資料を見るだけで終わることはなく、マネジメントインタビューなどのヒアリングも実施されます。M&Aにおいてはスピード感も重要ですので、少ない回数かつ要点を押さえたヒアリングによる効率よい調査が求められます。

結果報告・検討

財務デューデリジェンスは専門家のレポートとして買い手企業に報告がなされます。買い手企業ではその報告内容をもって最終的な意思決定を実施しますが、場合によっては最終的な価格交渉に影響を与えることもあります。

財務デューデリジェンスの調査項目

収益性分析

買収する企業における収益性の分析は、損益計算書、いわゆるPL面に焦点をあてます。損益構造を詳細に調査したうえで「正常収益力」の分析を行い、過年度損益で発生しているイレギュラー事項や調整項目を整理し、買収後の運営によってどういった損益水準が再現できそうかを検討します。買い手としては今後利益を獲得していくために買収を行いますので、この調査は最重要といっても過言ではありません。

運転資本分析

多くの人たちは収益をはじめとするPL面に目がいきがちですが、実はBS面も重要です。中でも営業・事業を継続していくためには運転資本が大切であり、ここの分析をおろそかにすると資金繰りに影響を及ぼします。売上債権や棚卸資産、仕入債務に分類される勘定科目がターゲットとなりますが、将来における正常な運転資本水準を検討します。調査・検討結果によってはこの内容が正常収益力分析に影響を及ぼすこともあります。

設備投資分析

設備投資は突発的に大きくキャッシュアウトするものを、耐用年数に亘って費用の繰り延べるものです。そのため短期的に見ると利益に大きな影響を与えませんが、一時的な資金繰りや減価償却費という形で将来の損益には影響を与えます。そのためM&A場面においては過去の設備投資が適切だったのかどうかも含め、今後の設備投資計画を精査することが必要です。特に売主サイドとしては数字を良く見せるため設備投資を抑制するケースもありますので、注意が必要です。

ネットデット(純有利子負債分析)

ネットデットとは、貸借対照表上にある有利子負債から現金及び預金を控除した数値のことをいいます。ネットは「純」、デットは「負債」を意味する言葉であり、直訳すると「純負債」つまり手元にあるキャッシュを全額返済に回したとして残る負債がどれくらいか、という指標になります。そして株式価値の算定を実施するうえにおいてはデットライクアイテムやキャッシュライクアイテムの検討・考慮も行い、状況整理を実施し結論となる数字をはじき出します。

簿外債務、偶発債務

財務デューデリジェンスでしっかり見なければならないポイントの一つとして、帳簿に計上されていない債務や直近で発生している、あるいは発生すると見込まれる債務などがあり、これを簿外債務や偶発債務といいます。これらも企業価値評価には影響を与える項目ですので、調査・検討が必要です。

経理・財務の管理体制(実務の経営統合)

経理や財務の管理体制についても、買収後どのように統合していくかを検討する必要があります。システム的な話やガバナンスの面など、買収した後の統合や引き継ぎ、業務継続がスムーズにいくよう、体制面についても明確化しておく必要があります。

財務DDは数字に強いコンサルに

コンサルタントと言っても星の数ほどいますし、その種類はさまざまです。ここで紹介した財務デューデリジェンスはM&A場面などにおいて財務面の調査を行うものですので、公認会計士や税理士といった数字に強いコンサルに依頼しましょう。

M&A成功を左右する
デューデリジェンスにおすすめの
FAS・コンサル会社をチェック

M&Aの道標となる
デューデリジェンスの
必須ノウハウとは…?

M&Aにおいて必要不可欠とされるデューデリジェンス。調査の内容は各社によってさまざまですが、自社に適切な選択をすることが成功への近道です。
当サイトではM&A成功の鍵を握るデューデリジェンスにおいて、買い手企業が知っておくべき内容をまとめました。デューデリジェンスの依頼先となるコンサル会社や監査法人系FASの選び方についても紹介しています。ぜひご覧ください。